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名前は、人生で最初のおくりもの。けれど、日本では1年に約5,000人が、家庭裁判所に「名前を変えたい」と申し立てています。そして、昔の日本では、名前は一生のうちに何度も変えるものでした。名前は、どうして自由に変えられなくなったのか。今はどんなときに、どうすれば変えられるのか。裁判所の統計と案内、国立国会図書館の資料をもとに、ひもといていきます。
最高裁判所の「司法統計年報」には、全国の家庭裁判所で、名前の変更を申し立てた件数と、その結果が載っています。2025年(令和7年)は、4,979件の申し立てがありました。この年に終わった5,023件のうち、認められたのは3,459件(約7割)、認められなかったのは408件(約8%)、申し立てを取り下げたのは1,095件(約2割)でした。
| 年 | 申し立て | 認められた | 認められず | 取り下げ |
|---|---|---|---|---|
| 2016 | 6,341件 | 4,654件 | 422件 | 1,287件 |
| 2018 | 5,986件 | 4,188件 | 433件 | 1,275件 |
| 2020 | 6,082件 | 4,238件 | 411件 | 1,298件 |
| 2022 | 5,728件 | 4,146件 | 474件 | 1,074件 |
| 2024 | 5,168件 | 3,572件 | 431件 | 1,071件 |
| 2025 | 4,979件 | 3,459件 | 408件 | 1,095件 |
「認められた」「認められなかった」「取り下げ」は、その年に終わった事件の数です。司法統計年報 家事編 第3表より。
この10年、終わった事件のうち認められたのは、どの年もおよそ7割でした。いっぽうで、2割ほどの人が、途中で申し立てを取り下げています。
さかのぼると、名前の変更の申し立ては、1965年(昭和40年)の12,143件がいちばん多い年でした。今は、その半分以下です。反対に、名字の変更の申し立ては、昭和のころの1,000件ほどから、今は1万2千件ほどに増え、名前の変更よりも多くなっています。
今では一生同じ名前を名乗るのがふつうですが、昔の日本では、名前は人生の節目ごとに変えるものでした。
武士の家では、子どものころの名前(幼名)があり、大人になる儀式の元服で、幼名を改めて、新しい名前を授かりました。そのとき、儀式で冠をかぶせる役の人(烏帽子親)から、名前の一字をもらうこともありました。
たとえば徳川家康は、幼いころは「竹千代」、元服して「元信」と名乗りました。「元」は、今川義元からもらった一字です。のちに「家康」と改めたのは、今川家と離れて歩むことを示すためだった、と国立国会図書館の資料は伝えています。
江戸時代には、年を重ねたり、立場が上がったりするたびに名前を改めるのが当たり前でした。暮らしの中の名前は、今よりずっと、その人の歩みに合わせて変わっていくものだったのです。
それが大きく変わったのは、明治のはじめです。全国の戸籍が作られるのに合わせて、名前の決まりが整えられました。
| いつ | 何が決まったか |
|---|---|
| 1872年(明治5年)5月7日 | 太政官布告第149号。ふだんの呼び名と正式の名前の二つを使ってきた人も、これからは名前を一つにすることになりました。 |
| 1872年(明治5年)8月24日 | 太政官布告第235号。身分を問わず、名字・名前・屋号を変えることが禁じられました。ただし、同じ名字・同じ名前でどうしても困る人は、役所に願い出ることができました。 |
| 1948年(昭和23年)1月1日 | 今の戸籍法が始まり、明治5年の改名の禁止がなくなりました。かわりに、家庭裁判所の許可を得て、名前を変える仕組みになりました。 |
人生の節目ごとに名前を変えていた日本人が、一つの名前を一生名乗るようになったのは、わずか150年ほど前のことです。そして今の「許可を得て変える」形になって、まだ80年に満たないのです。
今の戸籍法では、名前を変えるには「正当な事由」が要り、家庭裁判所の許可を得てから、市区町村の役場に届け出ます。裁判所は、「正当な事由」を、名前を変えないと、その人の社会生活に支障が出る場合と説明しています。好みや気持ち、信じていることへの願いだけでは足りない、とも書いています。
裁判所が用意している申立書には、理由を選ぶ欄があります。
これは申立書の選ぶ欄で、「これに当てはまれば必ず許される」という意味ではありません。本当に暮らしに支障が出ているかを、裁判官が一人ずつ見て決めます。また、戸籍の専門書には、商売のうえで名前を継ぐ必要がある「襲名」も、正当な事由と認められうる場合としてあげられています。昔の日本の名前の受け継ぎ方が、形を変えて残っているのです。
名古屋家庭裁判所の案内には、はっきりと、姓名判断を理由とするものは、一般的には認められていない、と書かれています。画数が悪いから、という理由だけで戸籍の名前を変えるのは、むずかしいと考えてください。
姓名月も、画数だけを理由に、戸籍の名前を変えることはおすすめしません。数は名前がもつ傾向で、運命を決めるものではないからです。画数が気になるときは、ふだん名乗る名前を整える方法があります。
| ことがら | 中身 |
|---|---|
| 申し立てる場所 | 住んでいるところの家庭裁判所 |
| 申し立てる人 | 名前を変えたい本人。15歳未満のときは、親など法定代理人が代わりに申し立てます。父母がともに親権を持つときは、原則として二人で申し立てます。 |
| 費用 | 収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手。切手の額は、裁判所ごとに違います(東京家庭裁判所の案内では1,770円分)。 |
| 確かめ | 裁判所が、書面でたずねたり、聞き取りをしたり、裁判官が直接話を聞いたりして、事情を確かめます。 |
| 結果 | 許すかどうかが決まり、審判書の写しが届きます。名古屋家庭裁判所の案内では、ここまで「約1か月」が目安とされています。認められなかったときは、2週間以内なら不服を申し立てられます。 |
| 届け出 | 許されたら、審判書の写しを持って、本籍地か住んでいるところの役場に届け出ます。これで戸籍の名前が変わります。 |
認められなかったあとで、あらためて申し立てることもできます。ただ、事情が何も変わっていなければ、同じ判断になる見こみが高い、と裁判所は案内しています。
許すかどうかは、「暮らしに本当に支障が出ているか」で決まります。そのため、困っていることを、目に見える形で示せるかが大切です。
くわしい書類や切手の額は、申し立てる家庭裁判所の案内で確かめてください。
名字(法律では「氏」)を変えることもできますが、名前より重い「やむを得ない事由」が要ります。裁判所は、これを「社会生活に著しい支障が出る場合」と説明しています。名字は同じ戸籍の家族もいっしょに変わるので、15歳以上の家族の同意書が要ります。結婚と名字のことは、「結婚で苗字が変わると、姓名判断はどうなる?」でお伝えしています。
2025年(令和7年)5月26日から、戸籍に名前の読み方(振り仮名)が載るようになりました。読み方だけを変えるときも、原則として家庭裁判所の許可が要ります。自分で届け出をせず、役場が振り仮名を書き入れた人だけは、一度だけ、届け出だけで読み方を変えられます。くわしくは「名前の読み方が戸籍に載る決まり」をご覧ください。振り仮名の届け出に手数料はかかりません。お金を求める連絡は詐欺だと、法務省が注意をよびかけています。
戸籍の名前は変えずに、ふだん名乗る名前だけを変える人もいます。字を一つ変える、ひらがなにする、仕事で使う名前を決める、などです。ふだんの名前をどれだけ使っても、戸籍の名前は、許可と届け出がなければ変わりません。
ただ、長く使ってきたふだんの名前は、のちに戸籍の名前を変える理由になることがあります。申立書の「通称として永年使用した」がそれです。何年使えばよい、という決まった年数はありません。
結婚前の名字(旧姓)は、住民票やマイナンバーカード、旅券に並べて書くことができます。これは、戸籍に一度載ったことのある名字だからできることです。戸籍に一度も載ったことのない名前は、この仕組みには入りません。
姓名月では、名前は、毎日呼ばれ、書かれるうちに働くものだと考えています。戸籍の名前を変えなくても、ふだん名乗る名前を大切に使うことで、その名前はあなたを支える名前に育っていきます。
新しい名前を考えるときは、画数だけで決めないでください。呼ばれたときの響き、字にこめた思い、そして、この先何十年も自分で書き続けられるかどうか。どれも、画数と同じくらい大切です。
候補がいくつかあるときは、姓名月の「改名くらべ」に入れると、今の名前と候補の画数や吉凶を、並べて比べられます。
姓名判断で画数が悪いことを理由に、改名できますか?
むずかしいと考えてください。名古屋家庭裁判所の案内には、姓名判断を理由とするものは、一般的には認められていないと書かれています。画数が気になるときは、まず、ふだん名乗る名前や呼ばれ方を整える方法があります。
ふだんの名前を何年使えば、戸籍の名前を変えられますか?
決まった年数はありません。長く使ってきたことは理由の一つになりえますが、許すかどうかは、裁判官が一つずつ判断します。使ってきたことは、消印のある郵便物や名簿、卒業アルバムなどで示します。
子どもの名前を変えることはできますか?
できます。15歳未満のときは、親など法定代理人が代わりに家庭裁判所へ申し立てます。父母がともに親権を持つときは、原則として父母の二人で申し立てます。15歳以上なら、本人が申し立てます。
昔の人は、人生の節目ごとに名前を改め、そのたびに新しい自分を生きてきました。今は、一つの名前を一生名乗るのがふつうになりました。名前を変えると決めた人にも、今の名前で生きていくと決めた人にも、それぞれの理由があります。どちらを選んでも、大切なのは、その名前を胸を張って名乗ることです。
三右衛門の知見と、裏づけの資料