姓名月

姓名月 > 読みもの

ニュースになった名付け。子どもを守る決まりと、願いのこもった名前

名前の決まりは、はじめから今の形だったわけではありません。ある名付けがニュースになり、ある家族が裁判所に願いを伝え、そのたびに、国は決まりを見直してきました。このページでは、子どもを守るために少しずつ育ってきた名前の決まりと、時代や多くの人の願いがこもった、名前のうれしいニュースの両方を、本当にあったできごとからお伝えします。

名前の決まりの、はじまり

戸籍法という法律には、「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない」と書かれています。ふだんの暮らしでよく使われ、やさしく読み書きできる字を使いましょう、という決まりです。

この決まりのもとで、1948年(昭和23年)1月から、子どもの名前に使える字がはっきり決められました。使えたのは、その少し前の1946年(昭和21年)11月に、公の文書や新聞などで使う字として示された「当用漢字」の1,850字だけでした。

けれど、名前には、昔から親しまれてきた字があります。当用漢字の表は、はじめから、人の名前や地名については別に考えることにしていました。そこで国語審議会が、名前によく使われてきた字を話し合い、1951年(昭和26年)5月25日、「人名用漢字」として92字が加えられました。名前のための字の表は、ここから始まりました。

その後も字は少しずつ増え、今では、常用漢字と人名用漢字をあわせて、およそ3,000字が名前に使えます。どの字が使えるかは、法務省の決まり(戸籍法施行規則)で示されています。

名前を決めるのは、親です。その自由は、とても大切にされています。けれど、名前を一生使うのは、名付けられた子ども自身です。親の思いと、子どもの暮らし。その二つのあいだで、決まりはどこに線を引けばよいのか。これから紹介するできごとは、どれもその問いに向き合ったものです。

1993年、「悪魔」という名前の出生届

1993年(平成5年)8月、東京都内の市に、男の子の名前を「悪魔」とする出生届が出されました。「悪」も「魔」も常用漢字なので、市は届けをいったん受け付け、戸籍にも書きました。

その後、市は法務省に相談し、この名前はふさわしくないとして、戸籍に書いた名前を、書きまちがいとして消しました。そして、別の名前にするよう父母に求めました。父親はこれに納得できず、家庭裁判所に不服を申し立てました。

1994年(平成6年)1月31日、東京家庭裁判所八王子支部は、次のような判断を示しました。

つまり裁判所は、名前そのものには疑問を示しながら、役所のやり方も正したのです。名前を大切にすることと、手続きを大切にすること。その両方が示された審判でした。

市は高等裁判所に申し立てる構えを見せましたが、その後、父親は申し立てを取り下げ、男の子は別の名前で届け出られました。こうして、男の子には新しい名前がつきました。

このできごとは大きく報じられ、名前は親だけのものではなく、子どものためのものでもある、ということを、多くの人が考えるきっかけになりました。

使いたい字が、裁判で認められて加わった

決まりは、名前を制限するためだけに使われてきたわけではありません。暮らしの中で親しまれている字なのに、名前に使えない。そんな声にこたえて、使える字が増えてきた歩みもあります。

その大きなきっかけになったのが、「曽」の字です。「曽」は、当時は常用漢字にも人名用漢字にも入っていませんでした。子の名前に「曽」を使った出生届が受け付けられず、親が裁判所に申し立てました。

2003年(平成15年)12月25日、最高裁判所は、表に載っていない字でも、「社会通念上明らかに常用平易な文字」であれば、家庭裁判所が市町村長に受け付けを命じることができる、と判断しました。そして、「曽」はそうした字であり、子の名に使える、としました。

この決定のあと、2004年(平成16年)2月に「曽」が人名用漢字に加えられました。法務省は、この最高裁の判断などを背景に、人名用漢字の見直しを法制審議会に求めています。こうして、同じ年の大きな見直しへとつながっていきました。

その後も、裁判をきっかけに字が加わっています。

どの字の陰にも、わが子にこの字を贈りたい、と願った家族がいます。その願いが、あとに続く家族の選べる字を広げてきました。

2004年、名前にふさわしくない字は外された

2004年、法制審議会の人名用漢字部会は、名前に使える漢字を大きく増やす案をまとめました。はじめの案は578字。出版物の中でよく使われる字かどうかを、おもな目安にして選ばれたものでした。

この案について、法務省が2004年6月11日から7月9日まで広く意見を求めたところ、1,308件の意見が寄せられました。その中には、案に入っている一部の字を外してほしい、という声が多くありました。法務省は、その例として「糞」「屍」「呪」「癌」「姦」「淫」「怨」「痔」「妾」を挙げています。縁起が悪い、不潔、みだら、などが理由でした。

部会は、とくに外してほしいという声が多かったこの9字を、名前には明らかにふさわしくないとして案から外しました。さらに、ほかの字についても一つずつ話し合い、名前にふさわしくないと考えられる字を外していきました。

最終的な意見では、「名に用いることが社会通念上明らかに不適当と認められる漢字は除外する」とされ、488字を加えることが適当とまとめられました。そして2004年9月27日、488字が人名用漢字に加わりました。

よく使われる字かどうかだけでなく、名前として子どもが背負うことになる意味も考える。多くの人の声によって、そうした考え方が決まりの中に書きこまれたのです。

2010年、常用漢字から外れた字も、名前には残った

2010年(平成22年)11月30日、ふだん使う漢字の目安である常用漢字表が新しくなりました。196字が加わる一方で、「勺」「錘」「銑」「脹」「匁」の5字が表から外れました。

名前に使える字は、常用漢字と人名用漢字です。常用漢字から外れると、その字は名前に使えなくなるおそれがありました。「銑」のように、名前に使われてきた字もあります。そこで、この5字は人名用漢字に移され、これまでどおり名前に使えることになりました。

字の表が新しくなっても、名付けに困る家族が出ないように。そんな心くばりのある見直しでした。

大人になって、自分で名前を変えた人

2019年(平成31年)3月、「王子様」という名前をつけられた18歳の高校生が、家庭裁判所の許可を得て、名前を変えたことが報じられました。高校を卒業する前に、自分で家庭裁判所に行き、手続きをしたということです。

名前には、名付けた親の思いがこめられていたことでしょう。そして、自分の人生を考えて名前を変えたのも、本人のまっすぐな選択です。どちらかが正しく、どちらかがまちがっている、という話ではありません。

戸籍法107条の2では、正当な事由があるとき、家庭裁判所の許可を得たうえで届け出れば、名を変えられると決められています。許可が出るかどうかは、ひとりひとりの事情によって、裁判所が判断します。

この決まりは、名前がどうしても重荷になってしまったとき、本人が人生を歩みなおせるように用意された、もうひとつの守りです。

名前の読み方にも、決まりができた

字の決まりに続いて話し合われたのが、名前の読み方です。それまで戸籍には、名前の読み方は書かれていませんでした。

2022年(令和4年)5月、法制審議会の部会は、戸籍に読み方を書くための案をまとめ、法務省が広く意見を求めました。案では、漢字のふつうの読み方とちがう読み方を、どこまで認めるかについて、三つの考え方が示されました。報道では「キラキラネーム」という言葉でも取り上げられ、多くの人が名前の読み方について考えるきっかけになりました。

2023年(令和5年)2月17日、法制審議会は、名前の読み方は、その字の読み方として一般に認められているものでなければならない、という考え方をまとめ、法務大臣に伝えました。

その後、法律が改められ、2025年(令和7年)5月26日から、戸籍に名前の読み方(振り仮名)も載るようになりました。名前の読み方は、その字の読み方として一般に認められているものでなければなりません。くわしくは「名前の読み方と戸籍」をご覧ください。

思いをこめた読み方を大切にしたい気持ちと、だれもが読める名前であってほしい気持ち。その両方を考えながら、時間をかけて話し合われた決まりです。

海外では

名前の決まりは、日本だけのものではありません。国によって形はちがいますが、名前が子どもの重荷にならないように、という考え方は共通しています。

どの国でも、名前を決めるのは親です。そのうえで、名前が子どもの重荷になりそうなとき、社会が手をさしのべる仕組みが用意されています。

名前の決まりの歩み

日本のできごとを、年の順に並べると、次のとおりです。

年できごと
1948年1月から、子どもの名前に使える漢字が、当用漢字1,850字に決められる。
1951年5月25日、人名用漢字92字が加わり、名前に使えるようになる。
1993年東京都内の市に「悪魔」とする出生届。市がいったん受け付けたのち、戸籍の記載を消す。
1994年東京家庭裁判所八王子支部が、名前は命名権の濫用にあたるとしつつ、市のやり方も正す。その後、別の名前で届け出られる。
2003年最高裁判所が、「曽」は社会通念上明らかに常用平易な文字で、子の名に使えると判断。
2004年2月に「曽」が加わる。9月27日、意見募集で外された字をのぞいて、488字が人名用漢字に加わる。
2009年4月、裁判所の判断を受けて「祷」「穹」が加わる。
2010年11月30日、常用漢字表が新しくなる。表から外れた「勺」「錘」「銑」「脹」「匁」は人名用漢字に移り、名前に使い続けられる。
2015年裁判所の判断を受けて「巫」が加わる。
2017年裁判所の判断を受けて「渾」が加わる。
2019年「王子様」と名付けられた18歳の人が、家庭裁判所の許可を得て名前を変えたことが報じられる。
2022年5月、戸籍に名前の読み方を書く案がまとまり、広く意見が求められる。
2023年2月17日、法制審議会が、読み方は一般に認められているものに、という考え方を法務大臣に伝える。
2025年5月26日から、戸籍に名前の読み方が載るようになる。
2026年裁判所の判断を受けて「勒」が加わり、人名用漢字は864字に。

使える字を広げる動きと、子どもを守るために線を引く動き。決まりは、その両方を行き来しながら、少しずつ形を整えてきました。どちらも、名前が子どもの人生を支えるものであってほしい、という同じ願いから生まれたものです。

名前に願いがこもった、うれしいニュース

名前のニュースは、決まりの話だけではありません。名前には、その時代の空気や、家族の願い、そして多くの人の思いがこもります。そんな、心があたたかくなるニュースをいくつかご紹介します。

明治安田生命は、毎年、その年に生まれた子どもの名前を調べて発表しています(同社の保険に入っている家庭のお子さんが対象です)。その結果からは、名前が時代を映してきたことが見えてきます。

皇室では、お子さまがお生まれになると、「命名の儀」でお名前が決まります。

どちらも、お生まれになって7日目のことでした。名前をていねいに記し、そっとそばに置く。名前に願いを託す心が伝わる儀式です。

みんなで名前を考えた、うれしいできごともあります。2017年(平成29年)、上野動物園で生まれたジャイアントパンダの赤ちゃんの名前は広く募集され、32万2,581件の応募が集まりました。選考で残った8つの候補のうち、いちばん応募が多かった「シャンシャン(香香)」に決まりました。東京都知事は「香」の字について、花が開くような明るいイメージ、と紹介しています。

時代の願い、家族の願い、そして、たくさんの人の願い。名前は、いつも誰かの思いを乗せて生まれてきます。

よくある迷い

使いたい字が出生届で受け付けてもらえなかったら、どうなりますか?

戸籍法では、市区町村長の処分に納得できないとき、家庭裁判所に不服を申し立てることができます。これまでにも、その字が「社会通念上明らかに常用平易な文字」だと認められ、受け付けるよう命じられた例があります。ただ、時間も手間もかかります。名付けの早いうちに、使える字かどうかを確かめておくのがいちばん安心です。

表に載っている字なら、どんな名前でも届け出られますか?

かならずしもそうではありません。1994年の家庭裁判所の審判では、字がどちらも常用漢字でも、子の立場から見て名として明らかにふさわしくない名前は、命名権の濫用にあたるとされました。字だけでなく、名前として呼ばれる子の気持ちを考えることが大切です。

名前の読み方は、自由に決められますか?

2025年5月26日から、戸籍に名前の読み方も載るようになりました。読み方は、その字の読み方として一般に認められているものでなければなりません。思いのこもった読み方を大切にしながら、まわりの人にも読んでもらえるかどうか、早めに確かめておくと安心です。

大人になってから、自分の名前を変えることはできますか?

できます。戸籍法107条の2により、正当な事由があるとき、家庭裁判所の許可を得たうえで届け出れば、名を変えられます。ただし、許可が出るかどうかは、ひとりひとりの事情によります。

決まりができたのは、親を疑っているからですか?

そうではありません。名前は、ほとんどの場合、深い愛情からつけられます。決まりは、その名前が、子どもが長い人生を歩むうえで、重荷ではなく支えになるように、という願いから少しずつ整えられてきたものです。

名前は、人生で最初のおくりもの。

決まりの歩みをたどると、どのできごとの中心にも、ひとりの子どもがいます。そして、その子のしあわせを願う人たちがいます。子どもを守るための決まりも、願いのこもったうれしいニュースも、根っこにあるのは同じ思いです。この名前が、その子の一生を明るく照らしますように。

決まりは、名付ける自由をうばうためのものではなく、みんなで少しずつ整えてきた手すりのようなものです。その手すりがあるから、親は安心して、名前に思いきり願いをこめることができます。

姓名月は、画数、響き、そして名前にこめる思いから、その子に合う名前を一緒に考えるお手伝いをしています。呼ばれるたびに、本人がうれしくなる名前を。名前は、人生で最初のおくりもの。

使える字の中から、姓に合うよい画数を見てみませんか。

名付けの画数を見る(無料)

姓を入れるだけ。候補が決まったら、「鑑定する」で、よみも入れて一つずつ読めます。

三右衛門の知見と、裏づけの資料

姓名月のトップ赤ちゃんの名付け名前に使える字名前の読み方と戸籍旧字体と新字体戸籍と日常の名前改名の手続き結婚と苗字霊数とは凶の数がある名前日本の名字の話名字の由来珍しい名字の話多い名字100の天格都道府県で多い名字家紋の話先祖のたどり方個人情報の扱いお問い合わせ