姓名月
姓名月 > 読みもの
ひいおじいさんは、どんな名前だったのでしょう。どこで生まれ、どこで暮らしたのでしょう。先祖をたどる道は、だれにでも開かれています。いちばん確かな入り口は、役所にある戸籍です。自分の戸籍から、親、祖父母、そのまた親へと、順にさかのぼっていきます。このページでは、戸籍の取り方と読み方、古い戸籍が残る年数、そして戸籍の先にある、お墓やお寺、図書館での調べ方まで、一歩ずつお伝えします。
先祖をたどるとき、最初の手がかりは、家族の思い出です。祖父母や父母、親せきに、話を聞いてみてください。生まれた土地、昔住んでいた家、家に伝わる言い伝え。何気ない話が、あとで戸籍を読むときの大きな助けになります。
家系を調べるには、昔のことを知っている親族から話を聞くことが、とても大きな手がかりになります。聞ける人がいるうちに、早めに動きましょう。話を聞いたら、聞いた日と、だれから聞いたかを、そのまま書きとめておきましょう。
先祖をたどるときに取る戸籍には、主に三つの種類があります。名前は少しむずかしいのですが、中身はやさしいものです。
| 種類 | 中身 | 取れる人 | 手数料 |
|---|---|---|---|
| 戸籍謄本 (戸籍全部事項証明書) | 今、だれかが入っている戸籍の、全員分の写しです。 | 戸籍に書かれている本人、その配偶者、父母や祖父母、子や孫 | 1通450円 |
| 除籍謄本 (除籍全部事項証明書) | 結婚や死亡などで全員がぬけたり、本籍を移したりして、閉じられた戸籍の写しです。 | 同じ | 1通750円 |
| 改製原戸籍謄本 | 法律が変わって戸籍の形が作りかえられたとき(電子の記録への切りかえを含みます)の、作りかえる前の戸籍の写しです。 | 同じ | 1通750円 |
手数料は、多くの市区町村でこの額です。頼む前に、その役所の案内で確かめてください。
改製原戸籍は、先祖をたどるときにとても大切です。戸籍が作りかえられるとき、新しい戸籍には、そのとき戸籍に残っている人だけが移ります。すでに結婚して出ていった人や、亡くなった人のことは、作りかえる前の戸籍にしか書かれていないことがあります。
戸籍に何を書くかは、戸籍法という法律で決まっています。どんなことがわかるのかを先に知っておくと、戸籍を読むのがぐっと楽になります。
今の戸籍には、まず、その戸籍の「本籍」が書かれます。そして、戸籍に入っている一人ひとりについて、次のことが書かれます。
| 書かれていること | たとえば |
|---|---|
| 名前 | 氏名。今の戸籍には、氏名の振り仮名も書かれます。 |
| 生まれた日 | 生まれた年月日。生まれた場所も、出生のことがらとして書かれます。 |
| 戸籍に入ったわけと日 | 生まれて入った、結婚して入った、など。 |
| 父と母 | 実の父母の名前と、長男・二女などの続柄。養子のときは、養親の名前と続柄も書かれます。 |
| 夫か妻か | 夫婦のときは、夫であるか、妻であるか。 |
| 前にいた戸籍 | ほかの戸籍から入った人は、前にいた戸籍の本籍と、その戸籍の筆頭の人の名前。 |
| 身分のことがら | 出生、認知、養子縁組、婚姻、離婚、親権、死亡、国籍、名の変更など。届け出た日なども、あわせて書かれます。 |
一方で、戸籍には住所は書かれていません。本籍と住所は、別のものだからです。住所のうつりかわりは、本籍地の市区町村が作る「戸籍の附票(ふひょう)」に書かれています。戸籍の附票には、名前や生まれた日のほか、住所と、そこに住み始めた日が記録されます。先祖がどこで暮らしていたかを知る、よい手がかりになります。
戸籍の附票の写しを頼めるのも、戸籍と同じように、そこに書かれている本人(ぬけた人も含みます)と、その配偶者、父母や祖父母、子や孫です。閉じられた附票は、今は150年残すことになっています。けれど、2019年(令和元年)6月20日より前は、残す年数が5年でした。そのため、古いものは残っていないことがあります。
明治から戦前までの古い戸籍は、「家」を単位にしています。家の主である戸主を中心に、家族が並んでいます。そのため、今の戸籍にはない書きこみが出てきます。
古い戸籍には、「士族」など、明治に定められた身分の呼び名(族称)が書かれていることもあります。こうした呼び名は、1947年(昭和22年)の戸籍法の改正でなくなりました。人の値うちとは、何のかかわりもないものです。また、明治5年に作られた壬申戸籍が今は見られないことは、「古い戸籍は、いつまで残っているの?」でお伝えします。
こうして戸籍をさかのぼると、先祖の名前、生まれた日と場所、親や兄弟、結婚した相手、家がどこから分かれてきたかなどが、少しずつわかってきます。
戸籍は、一枚ずつ、前の戸籍へとつながっています。戸籍には、一人ひとりについて、どの戸籍から入ってきたかが書かれています。たとえば「○○番地の、だれそれの戸籍から入籍」というように。この書きこみをたどると、ひとつ前の戸籍がわかります。
本籍は、結婚や引っ越しで、別の市区町村に移っていることがあります。そのときは、前の本籍地の役所に頼みます。窓口で「先祖をたどりたいので、さかのぼって取れるものをすべてください」と相談すると、つながる戸籍を探してもらいやすくなります。
戸籍法では、戸籍に書かれている本人(ぬけた人も含みます)と、その配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属が、戸籍の写しを頼めることになっています。つまり、自分から見て、たての流れにある家族の戸籍です。亡くなった祖父母や曾祖父母の戸籍も、この流れの中にあるので取ることができます。
兄弟姉妹や、おじ・おば、いとこなど、横の流れの家族は、この中に入っていません。それ以外の人が戸籍を頼めるのは、自分の権利を使うためなど、正当な理由があるときに限られます。法務省によると、2008年(平成20年)5月からは、だれでも戸籍を頼めるという、それまでの考え方が改められ、ほかの人が頼める場合がしぼられました。
窓口では、運転免許証などで本人であることを確かめられます。偽りや不正な手段で戸籍を取ると、30万円以下の罰金になります。
ただし、弁護士や司法書士、行政書士などは、相続や裁判などの仕事のために必要なときに限り、本人の承諾がなくても他人の戸籍を取ることが認められています(職務上請求)。自分の戸籍がだれかに取られたときに知らせてもらえる「本人通知制度」を設けている市区町村もあります。前もって登録しておくしくみで、設けているかどうかは市区町村によって違います。お住まいや本籍地の役所の案内で確かめてください。
2024年(令和6年)3月1日から、本籍地ではない市区町村の窓口でも、戸籍や除籍の証明書を頼めるようになりました。「広域交付」と呼ばれるしくみです。本籍地が遠くても、住んでいるところや、勤め先の近くの役所で、まとめて頼むことができます。いくつもの市区町村に分かれた先祖の戸籍も、一つの窓口で頼めます。
| 決まりごと | 中身 |
|---|---|
| 頼める人 | 本人、配偶者、父母や祖父母、子や孫。 |
| 頼み方 | 頼む本人が、市区町村の戸籍の窓口へ行きます。郵便や代理の人では頼めません。 |
| 持っていくもの | 運転免許証など、顔写真のついた身分証明書。 |
| 取れるもの | 戸籍と除籍の、全員分の証明書(謄本)です。一部の人だけの証明書(抄本など)は取れません。 |
| 取れないもの | 電子の記録になっていない、一部の古い戸籍や除籍。これは本籍地の役所へ、直接頼みます。 |
さかのぼって何通もまとめて頼むときは、長く待ったり、その日のうちに受け取れなかったりすることがあります。時間に余裕をもって出かけましょう。
広域交付で取れない古い戸籍や、窓口に行けないときは、本籍地の役所に郵便で頼むことができます。役所によって細かな決まりは違いますが、横浜市の案内では、おおよそ次のものを送ります。
先祖をたどるときは、請求書に「先祖をたどるため、つながる戸籍・除籍・改製原戸籍をすべて」などと書き、自分とのつながりがわかるように書いておくと、役所の方も探しやすくなります。何通になるかわからないときは、先に電話で相談すると安心です。
閉じられた戸籍(除籍)や、作りかえる前の戸籍(改製原戸籍)は、ずっと残るわけではありません。戸籍法施行規則では、除籍を残す期間は、閉じられた年度の翌年から150年と決められています。
けれど、この年数は、昔はもっと短いものでした。総務省の資料によると、除籍を残す年数は、次のように延びてきました。
| 時期 | 除籍を残す年数 |
|---|---|
| 1948年(昭和23年)、今の戸籍法が始まったとき | 50年 |
| 1962年(昭和37年)から | 80年 |
| 2010年(平成22年)から | 150年 |
そのため、年数が短かったころに、すでに処分された古い戸籍もあります。どこまで残っているかは、本籍地の役所によって違います。いつかやろうと思っているうちに取れなくなることもあるので、思い立ったときに始めるのがいちばんです。
また、明治5年(1872年)に作られた、全国で最初の戸籍「壬申戸籍(じんしんこせき)」は、1968年(昭和43年)から見ることができなくなっています。昔の身分にかかわる書き方が残っていて、それが悪く使われたことがあったためです。今取れるいちばん古い戸籍は、多くの場合、その次の時代の、明治の戸籍です。
古い戸籍を初めて見ると、少しおどろくかもしれません。手書きの、縦書きの文字がぎっしりと並んでいます。でも、決まった形があるので、慣れると読めるようになります。
戸籍のきまりは、時代とともに変わってきました。
戦前の古い戸籍は、「家」を単位に作られています。一つの戸籍に、家の主である「戸主」と、その家族がまとめて書かれています。戸主の父母や兄弟、そのつれあいや子どもまで、一つの戸籍に並んでいることもあります。そのため、古い戸籍を一通取るだけで、一族の名前がたくさんわかることがあります。
読むときのこつを、いくつかあげます。
古い戸籍の本籍には、「○○郡○○村大字○○」のような、今はない地名が書かれていることがよくあります。市町村が、何度も合わさってきたからです。
総務省の資料によると、明治21年(1888年)に7万1314あった市町村は、明治の大合併で1万5859に、昭和の大合併で3472(昭和36年)に、平成の合併で1727(平成22年)にまで減りました。昔の村の名前は、今の市町村の中の町名や字(あざ)の名前として、残っていることもあります。
昔の地名を調べるには、次のような方法があります。
戸籍でたどれるのは、多くの場合、明治のころまでです。その先を知るには、戸籍のほかの手がかりを探します。
一つめは、お墓です。墓石や、名前を刻んだ石の板(墓誌)には、亡くなった方の名前や戒名、亡くなった年月日が刻まれていることがあります。家紋が刻まれていることもあります。お参りのときに、書き写したり、写真に残したりしておきましょう。
二つめは、お寺の過去帳です。過去帳は、お寺で檀家の亡くなった方の戒名や俗名、亡くなった年月日などを書きとめた帳簿です。江戸時代のはじめに、すべてのお寺に置かれるようになったとされています。ただ、過去帳はお寺が大切に守っている記録です。見せていただけるかどうかは、お寺が決めることです。お世話になっているお寺に、ていねいに相談してみてください。
三つめは、家に伝わるものです。仏壇の位牌や、家で書かれた過去帳、古い手紙、土地の証文、系図などが残っていることがあります。家族とも相談しながら、大切に見せてもらいましょう。
先祖が住んでいた土地がわかったら、図書館の出番です。
どこから手をつければよいかわからないときは、図書館の調べもの相談の窓口に、遠慮なくたずねてください。調べたいことに合う本や資料を、一緒に探してもらえます。
わかったことは、家系図にまとめておくと、家族みんなで見ることができます。
家系図は、一度で完成させなくてかまいません。新しいことがわかるたびに、少しずつ書き足していけばよいのです。
戸籍を取れるのは、自分と直系の家族の分だけです。先祖をたどるのは、自分の家の物語を知るためのものです。
戸籍には、生まれた土地や家族のことなど、その人の大切な情報が書かれています。ほかの人の戸籍を取ったり、ほかの人の家柄や出身を調べたりすることは、深く人を傷つけ、差別につながってきました。明治の壬申戸籍が見られなくなったのも、昔の身分にかかわる書き方が、悪く使われたことがあったためです。
厚生労働省は、会社が人を採用するとき、本籍や生まれた土地のことを聞いたり、戸籍謄本を出させたり、身元を調べたりすることは、就職の差別につながるおそれがあるとしています。人の値うちは、生まれた家や土地で決まるものではありません。
自分の家の先祖を調べてわかったことも、親せきなど、ほかの方のことが含まれています。人に見せたり、外に出したりするときは、家族とよく相談してください。
戸籍をさかのぼって、先祖が住んでいた土地がわかると、名字の由来も見えてくることがあります。名字は、先祖が住んだ土地の名前や景色から生まれたものが多いからです。くわしくは「名字の由来」をご覧ください。
お墓や古い道具に家紋が残っていれば、それも大切な手がかりです。家紋のことは「家紋の話」に、名字の数や歴史のことは「日本の名字の話」にまとめています。古い戸籍に出てくる昔の形の字については、「旧字体と新字体」や「戸籍と日常の名前」もあわせてどうぞ。
兄弟姉妹やおじ・おばの戸籍も取れますか?
自分で頼めるのは、原則として、自分と配偶者、父母や祖父母、子や孫など、たての流れにある家族の戸籍です。兄弟姉妹やおじ・おばは、この中に入っていません。ただ、祖父母の古い戸籍には、おじやおばの名前も一緒に書かれていることがあります。
戸籍は、どこまでさかのぼれますか?
役所に残っている古い戸籍まで、さかのぼれます。除籍や改製原戸籍は、今は150年残すことになっています。けれど、昔は残す年数が短かったため、古いものがもう残っていないこともあります。明治5年に作られた壬申戸籍は、1968年から見ることができません。
本籍地が遠くても、戸籍は取れますか?
取れます。2024年3月から、本人が近くの市区町村の窓口へ行けば、遠い本籍地の戸籍もまとめて頼めるようになりました。顔写真のついた身分証明書が必要で、郵便や代理の人では頼めません。電子の記録になっていない一部の古い戸籍は、本籍地の役所へ郵便で頼みます。
戸籍に住所は書かれていますか?
いいえ。戸籍に書かれているのは本籍で、住所とは別のものです。住所のうつりかわりは、本籍地の市区町村が作る戸籍の附票に書かれています。閉じられた附票は、今は150年残すことになっていますが、以前は5年だったため、古いものは残っていないことがあります。
古い戸籍の字で、名前の画数を数えるのですか?
いいえ。姓名月では、今ふだん書いている字のまま、見たとおりに数えます。古い戸籍に昔の形の字があっても、画数の見方は変わりません。
古い戸籍の中で、ひいおじいさんや、ひいおばあさんの名前に出会うと、ふしぎな気持ちになります。その一人ひとりが、名前を呼ばれ、毎日を生き、次の命へとつないでくれました。その長いつながりの先に、今の自分がいます。
名前は、人生で最初のおくりもの。先祖から受け継いだ名字と、家族から贈られた名前。そのいわれを知ると、自分の名前が、少し違って見えてくるかもしれません。急がず、楽しみながら、家の歴史をたどってみてください。
三右衛門の知見と、裏づけの資料